病院嫌いの父1

病院嫌いの父

実家がなくなった。

私の生まれ育った実家はもうありません。

父のせいで

ずっとあると思っていた実家は思ったよりもあっけなく、なくなってしまった。

思い返せば西日本豪雨の日が終わりの始まりだったと思う。

その日は前日からの激しい大雨で周囲の小さな河川が氾濫を起こしていた。

私の住むアパートの駐車場にも1階の玄関ギリギリにも水が迫って来ている。

スマホの警報アラームも鳴りやまない。

私は当日1歳になる長女と不安な気持ちでこの雨がおさまるのを待っていた。

そんなとき、父からの着信があった。

「今すぐここに迎えに来てくれぇ!」「どういうこと?どこに?」

「良いからすぐ来てくれ!パートさんともお母さんとも連絡がつかないんだ!」

怒鳴るように父は言う。

宅配の自営業を営む父はこの雨の中、長年の経験値で大丈夫だろうと配達に出てしまい、水の溜まった道を突き進み、車が浸水しまい動かなくなったらしく、すっかりパニックを起こしていた。

まだ1歳の乳児を連れ、大雨の中、すぐに助けに行く自信もなく、「私はすぐに行けないから、お母さんに電話してみるよ」と言って父の電話を切った。

しかし母は、すぐには電話には出なかった。30分程して、折り返しかかってきて、「お父さん、車置いて、歩いて帰ってきたよ。すっごい機嫌悪い!!」と無事に帰宅したのを聞いてホッとした。

その後、パートさん達はこの雨がもう少し弱まって、配達することにしていたのに父だけ無謀にも配達に出たことが分かった。

母は雨が迫る家の前で水を掻き出しており、父の着信に気付かなかったという。

結局、雨が引いたあと、浸水して乗り捨てた車はエンジンも動いてなんとか動いたので、車屋さんに入院した。

その日からどこか父の様子がおかしくなったように思う。

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